あなたが月を指差せば、愚か者はその指を見ている

日々起きたこと、見たこと、考えたこと

やっぱりそうだよ、きかんしゃトーマスは人生のバイブル。

週末、私としてはとてもせわしなかったのですが、アマプラビデオでいくつか映画を見ました。簡単にメモ。

 

ブレット・トレイン

わが子も人生の教訓はすべて『きかんしゃトーマス』から学んで来たので、登場人物の一人にものすごく共感してしまいました。だいたい日本の子どもはしまじろうじゃなくてトーマスを見るベき。人生の不条理を学べます。そして多様で相対的な価値観ですかね。

なもので、わが子は一貫して『アンパンマン』ならばいきんまん派でした。そしてドキンちゃんが一番のお気に入り。ううむ、『きかんしゃトーマス』をもってしても人を見る目は養えなかったらしい。まあそこはしょうがない。

さて、悪運だけが強いグダグダな主人公を魅力的に、そして楽しく見せるには、ブラピぐらいの圧倒的なスターを出してこないと結局説得力ないのかもしれないなあ~、とホワイトウォッシュだと言われようともブラピの偉大さがつくづくわかります。

あと、既に言われていることかもしれませんが、《以下ネタバレ》マイノリティの気のいい人的な登場人物は必ず死ぬというハリウッドのセオリーが見事に覆されています《以上ネタバレ終了》。

35年前に私はケベック州に1年滞在していたことがあります。で、映画業界志望の同級生がいたんですね。当時、北米のフランス語圏で映画業界なんて需要あるんかな?なんて思ったんですけど、もうここ20年ぐらいケベックではたくさんのハリウッド映画が撮影され、編集作業が行なわれているじゃないですか?この日本、一応新幹線を舞台にした映画でもケベック州のロゴがエンドロールに出てくるとは思いませんでした。

アナザーラウンド

結局、マッツ・ミケルセンが冴えない中年教師4人組のなかにいるから説得力があるんだなと、上記のブラピと同じ話になってしまうのだけど、個人的には「今の高校生のほうが人生に対して真面目だ、深刻にとらえている」みたいな趣旨のせりふをちらっと言った教師のうちの一人にとても私は共感しました。

なお、デンマークは飲食店じゃなければ16歳以上がお酒を買って飲んでも合法らしい。で、登場人物の一人の奥さんが「飲み過ぎるのはかまわない、どうせデンマーク人はみんな飲んだくれてる。そこが問題じゃない」みたいなことを言ってて、面白いなあと思いました。だからこそ「じゃあ、なぜに飲み過ぎたのか?」という本質的な問題に夫婦そろって直面しなきゃいけなくなったあたりがよくできてるなあと思ったんですよね。

お酒って問題の原因というよりも結果だものね。

アルベール・カミュ

色んな作家の色んな文学作品がありますが、作家がどういう人だったのかというのをちゃんとふまえたうえで読める作品と、そんなことは関係なく面白く読める場合とありますよね。私が思うに、カミュって前者だと思うんです。

フランス「文学」科にあえて進むのなら、カミュの作品だってゴリゴリ興味をもって読める人が進むのだろうから別にいいのです。ですが私のように、たまたまカナダにいたからフランス語が少しできて、特段フランス文化には興味がないままフランス「語」学科に入ったような、フランス文学が必ずしも得意じゃない人にとっては、この映画はカミュの作品を読む導入としていいかもしれないと、ふと思いました。必ずしも正確な伝記ではないわけですが、カミュの作品の背景がわかりやすくなるのではないかと。

カミュサルトルとの対立が有名ですが、私はカミュの言い分のほうが誠実だったと思います。でも、サルトルの言い分のほうが現実なのかもしれません。一度、民族や階級、国家同士の対立が始まり、手段を選ばなくなったら、もうそこで宥和だのなんだのと言って止めることはできない。どちらが残るか決着がつくまで戦うしか選択肢はなくなるのかな、と。