あなたが月を指差せば、愚か者はその指を見ている

日々起きたこと、見たこと、考えたこと

どうして日本人はまめに手洗いできるのだろう?

 


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新型コロナウィルス問題が日本ではそれほど大きいように見えない理由として、検査対象を厳選しているからという意見がありますが、その一方で、日本人は律儀に手をしっかり洗ってるからだという意見もあります。

それは日本での子どもの頃からの衛生教育のおかげだとも言われますけど、それならなぜに今年だけインフルエンザの感染者数が低いと言われるのか、つまり今年「手を洗え」と呼びかけたら「守ることができる人が多い」のかの説明がつかないんじゃない?とも思ったわけです。

なぜ手を「洗う」のかではなく、なぜ手を「洗える」のか?なのかなと。

子どもの頃、学校の水道で手を洗うにしても、ぞうきんをすすぐにしても、冬はやっぱり水が冷たくて適当になってしまったものです。自宅でも運良く母が給湯器のスイッチをいれてくれていたならば、水とお湯の混合水栓のそれぞれのハンドル(?)を調節しながら、熱すぎず冷たすぎない水を出してゆっくり石けんをつけて手を洗うことはできましたが、そんなふうに洗面所で温かい水が出る家は決して多くなかったと思います。

それにそうした調節をするにしても、ある程度は水を出しっぱなしにしなければならず、水を出したままにしすぎると無駄遣いだと怒られました。「手を洗っているときは蛇口を閉めるのよ!」と言われるから閉めておくと、再び手をすすぐのにまた温度を調節するのがまた面倒だし、しかもハンドルは石けんだらけになるし。ええい、それなら我慢して冷たい水で洗っちゃえとなると、手の洗いそのものがおざなりになってしまうわけです。

六本木ヒルズだったか、表参道ヒルズだったか忘れましたが、新しい商業ビルができると自分の元々の仕事柄行ってみるのが好きだった義父が昔、私に言った言葉が忘れられないんです。「今はトイレの洗面所も蛇口に手を差し出せば温水が出るよなあ」。すると義母が「まったく洗面所に温水なんて無駄だ」とか言うわけです(実際、私が嫁に行った頃……20年前は夫の実家の洗面所は水だけしか出なくて、結構手を洗うのきつかった)。そうでなくても祖父母の家に冬に行くと、洗面所の水道からは水しか出なくて……夏は気持ちいいけど、冬は最悪。

私が今の家に住み始めてから20年になりますが、給湯器をオンにしておけば、32℃というこれまた熱すぎず冷たすぎない水がすぐに洗面所の水栓のハンドルをワンタッチで上げさえすればすぐに出てくるし、手をじっくり洗う間はワンタッチで下げさえすれば水は止まります(うちのハンドルは上にあげると水が出て、下げると止まる仕組み)。

もうすっかりそれが当たり前と思っていたけど、果たしてヨーロッパの古いおうちの洗面所の水道ってこんなふうになっているの当たり前かな?なんて思ったわけですね。もう四半世紀も前になりますが、私もフランスに短期間ながら暮らしたことがあります。そのとき借りた部屋……まあ、格安のおんぼろ物件ではあったのですが、要するに温水タンクが近くにあって、そこて温めておいたお湯をとってくる仕組みだから、たとえばシャワーで使い過ぎちゃうと途中で冷水になっちゃったりするわけです。だいたい洗面所の水栓って水だけしか出なかったかも。

ヨーロッパって昔ながらの建物がまだそのまま残っていて日本の方々は「素敵!」と思いがちかもしれませんが、水回りや暖房設備って老朽化してしまっているのが深刻だともいいますよね。それこそ私が翻訳に携わったフランス大統領の自著でも、大統領本人が、断熱性の乏しい住宅が多いために暖房ガンガン炊かなきゃいけないのが温暖化の一因、だから熱効率のよい新しい住宅を作るか、あるいは熱効率がよくなるようにリノベーションせねばならぬ、といった論調で述べていたかと思います。

なんというか「丁寧に手を洗う」ということ一つとっても、そういった設備の洗面所の水の温度で「きちんと手を洗えるか洗えないか」の差がもしかしたら出てくるんじゃないかしらと思った次第です。

日本はそういうところは恵まれているほうではないかな?ここ30年ぐらいの間に建った商業ビルの洗面所なんて普通に生暖かいお水出るでしょ?

 

まだまだ売ってますのでよろしくお願いします。

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