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現職の総理大臣と共産党員が市長の座を争ってるらしいフランスの港湾都市

今週末にフランスでは2回めの市町村議会議員選挙が行われます。1回目はフランスがコロナウィルスの万円により3月にロックダウンに突入した前日でした。1回目で当選者が過半数の票を集められず決定しなかった地域が2回めの選挙を行います。

 

このような仕組みになっているそうです。

jp.ambafrance.org

 

  • 人口3,500人未満の市町村:多数代表連記2回投票制
  • 人口3,500人以上の市町村:拘束名簿式比例代表2回投票制
  • パリ、リヨン、マルセイユ:各選挙区内で名簿式比例代表2回投票制を実施。(人口3,500人以上の市町村と同じ規則に従って)有権者は市議会議員と区議会議員を同時に選びます

 

フランスの現内閣総理大臣エドゥアール・フィリップさんも前回に続いて今回も市町村議会選挙に出ています。閣僚は地方議員兼務できるようですね。国会議員とは兼務できなくなったようですけど。

え、現職の首相なのに?!ってことなんですけどね、「共和国大統領が私に首相の仕事を任せてくれるまではその任務を最優先して全力を注ぎますけど、大統領が私よりも適切な人が見つけて他の人に首相を任せると決めたら、すぐに市政に戻ります。つまり戻ってくるのはどんなに遅くとも2022年5月(次の大統領選)。ですがずっと早くなるかもしれません。」という理屈だそうです。*1*2

 

で、無党派のグループ「ル・アーヴル!」という比例代表名簿を作って今回出てますね(前回は共和党LRに所属していたんですけど、首相になってから政権与党の共和国前進党の手前、共和党員やめちゃったらしく無所属)。

ともかく首相やりつづけることになるなら、同じグループの議員(現職)に市長をやっといてもらって、首相クビになったら市長辞めてもらって議会で自分を選んでもらうっていう戦術らしい。

すごい、フランスの政治ってすごい。民主主義後進国「らしい」日本に暮らしている私にはまったく理解できない。

こんなん自分が圧倒的な支持を持ってるって自負してなきゃできない。なんでそこ突っ込み入れないのか(いや入れてる人たっくさんいるんだけど、うまくかわしているんだな、これが)。

彼の人気にかかわる問題についてはまた後日。

 

で、フィリップさん、前回と違って第1回で過半数の票を集められなかった(コロナウィルスで外出を控えた人が多かったのか、そんな国政やるのか市政やるのかわからん人に投票できないと思われたのか)ので、今週末第2回の選挙があります。週末はル・アーヴルで選挙活動してましたね。

市長になれる可能性のあるグループ代表2人に対するインタビュー番組も地元のテレビ局でやってました。そんなもんここで興味がある人いるのかわからないけど、リンク貼っときます。

france3-regions.francetvinfo.fr

この2人(のグループ)の支持率世論調査すると10%内でわりと拮抗しているらしいんですけど、その割にはまったりとした討論会でした。やる気がないわけじゃないのですが、なんかこう、落ち着いた……いや、討論になってないというか……

フィリップさん、地元のみならず最近皮肉にも国政レベルでも人気すごくあがってしまったらしくて余裕かましてるのか知りませんけど、いつも以上に話がだらだらしているんですね。まあ、そりゃ討論会なんて自分の言いたいことだけ言うもんですけどね。確かに彼の良さとか魅力はそうした雑な端的さに走らない、理詰めで組み立てていく話術にあるといえばまさにそうなんだけど、悪いほうに出てる気がする。そのペースにつられてるのか、そういうキャラなのか知りませんけど、対抗馬のルコックさんもなんか冗長ムード。

対抗馬のルコックさんは正真正銘の左翼ですかね、所属政党の共産党のみならず「不服従のフランス(FI)」からも推薦とっているわけです(FI党首メランションも先週はル・アーヴル入りしました。)。ちなみにル・アーヴルって90年代まで30年間かな、長年共産党の市政だったらしい。なのでもともと港湾運送業関係で共産党の支持が根強い土地柄です。(だってフィリップのひいおじいさんも地元共産党の初期の党員の一人で、という話ですし。)

でもね、それにしても、そりゃル・アーヴルだってフランスでは大きな都市でしょうけど、人口18万人弱の市議会議員選挙(議員が決まったら議会で市長選)で出てくる候補者の肩書きが「現職総理大臣」って……。

で、人口18万人弱の地方都市で現職総理大臣グループと左翼戦線グループの一騎打ちの市長選(厳密には市議会議員選んでからその議会で市長選やるんだけど)って、なんかすごくありません? 何が起こってるのかと。

フィリップさん、ル・アーヴル市民は共産主義市政を選ぶか、選ばないかみたいな選択だ的な言い方しはじめてますしね。そんな究極なオチでいいんですか? いえ、細かいこと言えば、ものすごく市政に対するアイディアは豊富なのです。

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たしか2017年までの彼の市政の最中にトラムも完成したんじゃなかったかと思いますけど、やれ10年かけて風力発電誘致運動が成就したとか、レンタル電気自転車1000台入れるとか、図書館改革のおかげで図書館利用者が増えたからこの調子で、子どものスポーツクラブとか放課後課外活動参加費用を援助しますとか、これからさらに高等教育に力を入れて学生呼ぶとか、やれ世界遺産都市なんだから観光に力入れて人を呼ぶとか……わかりますよ。市外から人を呼びこもうって思わないと、市民の意識も向上しないんじゃないかっていう理屈なのでしょう。

なんだか行ってみたくなりますよね。しゃれてる町なんです。モネの絵のイメージのままで止まってる人は多いかもしれませんが。madamefigaro.jp

フィリップのドキュメンタリーではここに出てくる市庁舎のなかの市長室をずっと写してます。確かに20世紀のモダンな感じの部屋だなあとは思ってました。なので彼がいま居るマティニョン邸(首相官邸)が逆にキッチュに見えてきたりするほど。

 

で、なぜにこんな現職の首相が地元とはいえ市長やるかも!っていうことになっちゃってるかってことなんですよね。ふつうに考えればせいぜい同じグループの現職の市長を応援にしにくるぐらいのもんでしょ?

フィリップさんは冗長だとか言ってる割には、この文章のほうがだらだらしていてオチがなくなっちゃいましたけど、つづきは後で書けたら書きます。

 

Hôtel de Ville du Havre - Auguste Perret

フィリップさんのドキュメンタリーでも何度も出てきた市庁舎